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糖尿病

生活習慣病である糖尿病について

現在、糖尿病人口は 1、300万人を越えると推計されています。この数字は人口すべての10%をこえているのです。しかも困ったことに、その半分以上は治療を受けていないのです。
 その理由は、検診で血糖値が高く、糖尿病を強く疑われる状態でも、自覚症状があまりない病気のため、治療を受けないことがどうしても多くなりがちになるからです。

 しかし症状が出なくても、糖尿病は徐々に進行し、恐ろしい合併症をひきおこします。
糖尿病の本当の怖さは、この合併症なのです。

 糖尿病は一度なってしまうと、治すことはできません。適切な血糖コントロールを行い、食生活を改善し、一生、糖尿病とじょうずにつきあうことが必要となります。
 なによりも、まず糖尿病に対する正確な知識を持つことが大切です。




◆Ⅰ型糖尿病
Ⅰ型(インスリン依存型)糖尿病は、主に幼児から15才以下の小児期に、比較的急激に発症することが多く、かつては「若年型糖尿病」とも呼ばれていました。
このタイプの糖尿病の治療には、食事療法・運動療法のほか、インスリンの注射がかかせません。
膵臓β細胞が、なんらかの原因で破壊された結果、インスリンを分泌できなくなり、高血糖として発症します。

◆Ⅱ型糖尿病
Ⅱ型(インスリン非依存型)糖尿病は、インスリンの分泌量が低下しているか、インスリンの血糖を下げる作用が弱くなって発症するもので、遺伝素因のほかに、エネルギーの過剰摂取や栄養の偏った食生活、運動不足、ストレスが大きくかかわっています。
その治療にかならずしもインスリンを必要としないもので、日本人の糖尿病の90%を占めています。
このタイプは40才以降に発症することが多いのですが、肥満児の増加と共に10代から発症するケースも増えています。

◆妊娠糖尿病
胎盤からは、妊娠を順調に進めるためのホルモンが分泌されています。これらのホルモンには、インスリンの作用を弱める働きがあり、同時に胎盤そのものもインスリンを壊す酵素をつくっています。
ですから、妊娠中はより多くのインスリンが必要となります。
必要な量のインスリンが分泌されないと、妊娠をきっかけに糖尿病が発症することがあります。

◆その他
その他の特定の機序、疾患によるもの
 ・遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
 ・他の疾患、条件に伴うもの
 Ⅱ型(インスリン非依存)糖尿病の場合は、
 遺伝的な要素の他、ライフスタイルによる要素が大きく影響する




 過食などのエネルギー過剰摂取、運動不足、ストレスなどによって、インスリンの働きが悪くなったり、インスリンの分泌量が不足してくると、血中のブドウ糖の濃度が高くなり、全身にさまざまな合併症を引き起こす原因となります。
また、この高血糖状態そのものが糖尿病をさらに悪化させます。
 食生活のほか、ストレスも要素の一つです。
 ストレスを感じると、それに反応して 副腎皮質ホルモン・アドレナリンなどが分泌されます。これらのホルモンは、インスリンの働きを妨げ、血糖を上昇させます。
 この直接要素のほか、ストレスによる暴飲・暴食といった間接的な要素も無視できません。




糖尿病型

境界型

正常値

空腹時血糖値



2時間血糖値

126mg/dl以上

または(および)

200mg/dl以上

糖尿病型と
正常値の間
どちらとも
いえない。

110mg/dl未満

および

140mg/dl未満





「死の四重奏」について

 米国では、糖尿病・肥満・高血圧・高脂血症 が互いに誘発しあったり、悪化させてしまうケースが多く見られます。


 一人の患者さんがこの4つを併発すると、動脈硬化を促進し、心筋梗塞など、直接命に関わる病気の危険因子となることから「死の四重奏」と呼ばれています。現在日本では、糖尿病・高血圧・内臓脂肪沈着の3つを合併している人が増えつつあります。





















糖尿病と診断された時、どうすればいいのでしょう。

自覚症状がないので、なにか不都合が出てから対応すればいいのでしょうか?
その時の対応が将来の人生を左右するといってもいいでしょう。
恐ろしい合併症が出る前に、適切な対応をすることで、糖尿病を持たない人とほぼ同じような生活をすることができます。
 糖尿病を克服するために大切なことは、まず糖尿病に対する知識をもつこと、そしてそれまでの生活習慣を改善することが大切です。 糖尿病は慢性の病気で、薬を飲めば治るというわけではありません。
生活習慣そのものを改善し、一生 糖尿病とつき合う覚悟が必要です。生活および治療のポイントは
  
  ● 血糖のコントロール

  ● 適切な、食事・運動

  ● 血圧のコントロール





食事療法
 食事療法とはいえ糖尿病の人だけに特別な料理を作るのでは、調理に当たるヒトの負担が大変です。糖尿病の食事はバランスのとれた健康食ですから、家族全員が同じものを食べれば全員が健康になれるでしょう。
 健康な人は糖尿病食を基本に主食の量を増やしたり、おかずをもう1品加えたりして調整します。

   ● 一日3食
      まとめ食いは、一度にたくさんのインスリンが必要になり、膵臓に負担をかけます。

   ● 野菜は毎食
      生野菜なら両手に一杯程度。火を通した物なら片手に一杯。野菜に含まれる
       食物繊維は、食後、血糖が急激に上がるのを抑えてくれます。

   ● 主食は適量に
      ご飯だけが血糖をあげるわけではありません。主食を減らしすぎるとおかずを
       食べ過ぎたり、間食が増えたりしますので、注意が必要です。

   ● 副食(魚・肉・卵など)は1食に一皿
       ご飯より、おかずを食べ過ぎている人が多い物です。副食は1食一皿にして、
        種類を毎食変えましょう。

   ● 牛乳・果物は飲みすぎないように
       一見軽そうでも、カロリーは決して低くありません。また、食事といっしょにとる
       より、間食としてとったほうが血糖値は上がりにくくなります。

   ● 油を使った料理は1日2食まで
       油は非常に高カロリー、油料理の数を抑えて、取りすぎをふせぎます。




外食での注意
自分がよく食べる外食メニューが、どのくらいのエネルギーで、どの食品が不足し、何が多すぎるのかを、勉強しておく必要があります。1日の指示量を考えて、何をどれだけ食べ、何を残したらよいかをすばやく頭の中で計算しながら食べるようにします。

 特に宴会やパーティーで、多種類、多量の料理が出たときには、食べてよいものと残すものを選別できれば、外食であっても、摂取エネルギーのコントロールが可能です。

 男性に多いのは、家庭で妻がいくら食生活に気を配っていても、外で気ままに食べたり、飲んだりするために、少しも食事療法の成果が上がらないパターンです。外食の多い人ほど、本気で外食の食べ方を自分で勉強しないと、糖尿病のコントロールは望めません。

外食は1日1回に抑える
 糖尿病世代は働き盛りでもあり、昼夜2回の食事を外食という生活をしている人がたくさんいますが、健康のことを考えると、外食はなんとか1日1回までに抑えてほしいものです。1日1回なら、あとの2食で訂正して、バランスをとることもできますが、2回外食となると、栄養バランスの修正がなかなかききません。できれば外食のうちの1食は、手作り弁当持参などで野菜をたっぷりとり、塩分の調整を心がけたいものです。

外食で望ましいのは定食物
 単品料理よりは、定食物のほうが、栄養のバランスがとりやすい利点があります。不足しがちな野菜がたくさんとれるメニューを選びます。
 ざるそば、たぬきそばなど、糖質と脂質だけの単品で1食をすませることは禁物です。単品なら、五目焼きそばや、なべ焼きうどん、具の多い魚介スパゲッティなどを選び、できれば、サラダや小鉢物の野菜を追加注文します。また駅のスタンドなどで、牛乳1本補っただけでも、栄養のバランス瀕調整できます。
外食メニューは、家庭の料理にくらべると内容不明なものが多く、意外にエネルギーや塩分が多いことがあるので、目で見て、素材が何かわかるものを食べるのが無難でしょう。ギョーザ、ハンバーグなども中身がはっきりせず、ひき肉を使ったものは脂肪分も多いので、できれば控えたいメごユーの一つです。

アルコールも1日の総エネルギー量に入る
 アルコールを飲んでよいのは、血糖値が落ち着いていて、重い合併症のないときです。1日に日本酒1合、ビール中びん1本、ウイスキーはダブルで1杯程度が許容範囲とされています。
 仕事上のつきあいで、酒席に出なければならない場合は、アルコールのエネルギーも、1日の総エネルギーの中に入ることを考えて、コントロールしましょう。
 お酒を許可されている場合でも、食品交換表を参考に、1日2単位(160kcal)以内におさめましょう。
 



「糖尿病食事療法のための食品交換表」では、どんな栄養素が含まれるかによって食品を6つのグループ(表1~表6)に分けています。

表1
主に糖質を含む食品。穀類、いも、糖質の多い野菜と種実、豆類(大豆は除く)など

表2
くだものです。表1の食品と同様、糖質が多く、ビタミンミネラル、食物繊維を多く含んでいます。

表3
主に、タンパク質を多く含む食品。魚、肉、卵、チーズ、大豆製品。

表4
牛乳、乳製品。カルシウムの供給源として重要

表5
主に、脂肪を含む食品。バター、サラダ油、マヨネーズなどの油製品。
少量でも高エネルギーなので、取りすぎには要注意。

表6
野菜(糖質の多い一部の野菜を除く)、きのこ、海草、こんにゃく。植物繊維がタップリ!
 糖尿病の人にとってはうってつけの食品。


バランスのよい食品とは?
表1、表3、表6を主体にして、表2、表4を適度に配したものが、バランスのよい食事です。




欠食しないでしっかりとる食事は規則正しくが基本

< 相撲取りのような食事パターン >
若い人には、朝昼晩の食事のどれかを抜く傾向の人が意外に多いようです。
同じ量の食事を二回に分けて食べる人と、3回に分けて食べる人とでは、 二回の方が太るという調査もあります。
食事を抜いて一度に大量に食べると、それを脂肪として蓄えようとする メカニズムが働くからといわれています。
また、一食抜くことで余計に空腹感が強くなり、食べ過ぎになるということもあります。
相撲取りが一日2食であることを考えると、よく分かるでしょう。











< 満腹中枢が間に合わない >
満タイプの方には、早食いの人が目立ちます。
食欲は人間の大脳にある満腹中枢が、コントロールしているといわれています。
ところが食べるスピードが早いと、大脳を刺激するのが間に合わず、満腹感を感じる前に余計に食べてしまいます。
そして満足できなくなってしまうのです。早食いは肥満の大敵です。
ゆっくり食べるようにすると、よくかむことにもなり、一石二鳥です。


< 寝る前は食べない >
就寝前には、食事やおやつを取らないようにしましょう。
肥満者の多くは夜食を取る傾向にあると言われています。
夕食が済んでから、テレビなどを見ながらお菓子をつまんだりするのは禁物です。


< 甘いものは工夫して >
ダイエットにとって甘い物は要注意。
とはいえ、大多数の女性は甘いものが大好きです。
甘い物を一切絶つ人を見受けますが、これはストレスをためこむのでかえって逆効果です。
空腹時より食後に、洋菓子より脂肪分のない和菓子を取るようにするなど、取り方に工夫をしましょう。

< 一日30品目バランスよく >
ダイエット中でも、体に必要な栄養素は取る必要があります。
栄養の偏りは肥満のもとです。同じ食品だけをとっていると、他の栄養素が不足してしまいます。
そのためには、さまざまな食物を少しずつとること。
多くの食品をとることは栄養素をバランスよく取ることにつながります。一日30品目の食品(素材)を取ることを目標にしてください。


< 食物繊維をとろう >
特に食物繊維はカロリーが少ない上、便秘解消の効果がある、かむ回数が増えるので食べるスピードが遅くなり満腹中枢を刺激しやすい、などさまざまな効果があります。 激しいスポーツより長い時間続けられる軽い運動


激しいスポーツより長い時間続けられる軽い運動

< 脂肪はすぐに燃えない >
脂肪を効率的に燃やすためには、短時間の強い運動より、軽い運動を長い時間かけて行う方が
効果があります。
脂肪が燃えるのは、運動を開始して15~20分経過してからといわれています。
披露が残らない程度に長く行うことが大切なのです。


< 軽いウォーキングを >
手軽な運動としておすすめなのがウォーキングです。
歩くといってもダラダラ歩きではなく、やや早足でサッサと歩くこと、しかも大股歩きが効果的です。
軽く汗ばむほどの速さで、一日一万歩を目標にしてください。
万歩計をつけると目的意識が出て励みになるものです。
ちなみに、平均的サラリーマンが歩く歩数は、一日平均5000~6000歩程度とか。








< マイペースで楽しく >
運動の目的は健康維持です。競争心を捨て、マイペースで楽しく行うことが大切です。体調が悪いときは休みましょう。


< 毎日の生活の中で >
通勤通学、家事など毎日の生活の中に運動を取り入れるのも一つの方法です。エレベーターより階段を利用する、買い物はちょっと遠回りをして歩く時間を長くするなど、ちょっとした工夫をしましょう。


< 体重の減少より体のすっきり感 >
 食事や運動に気を配り正しい生活を送っても、必ずしも期待するダイエット効果が(=体重の減少)が現れるとは限りません。
脂肪は容積は大きくても重量は軽いので、体の脂肪が少なくなっても体重には反映されないことがあるからです。
 大切なのは、体重の減少を強調しないで、体調アップに目を向けることではないでしょうか。
 防風通聖散という漢方薬には、便秘の改善の効果や、それに伴って肩こりや腰痛などの不快な症状がとれ、ウエストの回りがすっきりします。
 防已黄耆湯の場合には、下痢やむくみなどの症状がなくなり、体全体が引き締まって重く感じていた体が軽くなります。
 症状は異なりますが、どちらも”体がすっきりする”のは共通しています。
 この夏は健康スリムの正しい情報提供を通してダイエットニーズに対応してはいかがでしょう。













糖尿病の合併症

糖尿病の合併症


糖尿病の合併症は、ほとんどが血管に障害が起こり、慢性的で自覚症状がなかなか現れないものが多いのですが、糖尿病性ケトアシドーシスのような急性合併症もあります。インスリンが高度に不足したり、かぜや感染症などによってインスリンの働きが低下して高血糖状態が高じると、働かない糖の代用として脂肪が燃えてエネルギー源となります。脂肪の燃えかす(ケトン体)は血液を酸性に変え、その結果、腹痛、吐き気、脱水症状などが起こり、やがて脳の酸欠状態を経て昏睡に陥ります。また、高齢者は高血糖による脱水症状から非ケトン性高浸透圧性昏睡に至ることがあります。どちらも放置すれば命にかかわる油断できない合併症です。
このほか、動脈硬化、細小血管障害、神経障害、免疫力低下による感染症、その他、さまざまな要因から多くの合併症が起こり得るのが糖尿病の特徴です。
糖尿病性網膜症は成人の失明の原因のナンバーワンです。

図解
脳卒中&心筋梗塞
糖尿病腎症
下肢閉塞性動脈硬化症脳梗塞図解
糖尿病網膜症
皮膚の病気
感染症
糖尿病神経障害(手足のしびれやえそなど)





急性合併症

慢性合併症

1.糖尿病性昏睡
 1)ケトン性昏睡
 2)非ケトン性高浸透圧性昏睡
 3)乳酸アシドーシス
 4)低血糖性昏睡
2.急性感染症

1.細小血管障害
 1)糖尿病性網膜症
 2)糖尿病性腎症
 3)糖尿病性神経障害
2.大血管障害
 1)脳血管障害
 2)虚血性心疾患
 3)糖尿病性壊疽
3.その他
 高脂血症・慢性感染症
 胆石症、白内障など





糖尿病の合併症
糖尿病の人は重症で長期間に及ぶ多くの合併症を経験します。合併症は糖尿病になって数カ月のうちに始まるものもありますが、大半は数年が経過してから現れます。合併症の多くは進行性です。血糖値を厳密にコントロールしている人ほど合併症を発症したり悪化することが少ない傾向にあります。

血糖値が高いと大血管も小血管も狭くなります。糖の複合物質が細い血管の壁に蓄積されて、血管が厚くなり血液が漏れ出します。血管が厚くなると、特に皮膚と神経に供給できる血液量が減少します。血糖値のコントロールが不十分だと、血液中の脂質レベルも高くなってアテローム動脈硬化を起こし、大血管の血流が低下します。糖尿病の人は糖尿病でない人に比べてアテローム動脈硬化が2〜6倍多く、若い時期から起こる傾向があります。

高血糖が長時間続くと、血液の循環不良によって心臓、脳、脚、眼、腎臓、神経、皮膚に障害が現れ、狭心症、心不全、脳卒中、歩行時の脚のけいれん(跛行[はこう])、視力低下、腎不全、神経の損傷(神経障害)、皮膚の損傷などが起こります。心臓発作と脳卒中も糖尿病の人に多く起きます。

皮膚の血液循環が悪いと潰瘍(かいよう)と感染症が起こりやすく、傷はすべて治りにくくなります。糖尿病では特に下肢の潰瘍や感染症を起こしやすく、これらの傷は治りにくいか、まったく治らず、足や脚の一部を切断しなければならないこともあります。

糖尿病の人は細菌や真菌にしばしば感染し、それが皮膚に典型的に現れます。血糖値が高いと、白血球は感染に対して有効に働くことができません。発症したあらゆる感染症はより重症化しやすくなります。

眼の血管が損傷されると視力を失うおそれがあります(糖尿病網膜症)。レーザー手術によって眼の血液が漏れている血管を塞げば、永続的な網膜の損傷を防ぐことができます。したがって、糖尿病の人は眼の損傷をチェックする検査を毎年受けるべきです。

腎臓が機能しなくなり腎不全になると、透析あるいは腎移植が必要になります。医師が糖尿病患者の尿をチェックするのは、異常に高いタンパク(アルブミン)値が腎障害の初期の徴候だからです。腎臓合併症の最初の徴候がみられたら、腎臓病の進行を遅らせるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が投与されます。

神経の損傷にはいくつかの徴候があります。単一の神経が機能しなくなると、片腕または片脚の力が突然弱くなります。両手、両脚、両足の神経が損傷すると(糖尿病性多発性神経障害)、感覚が異常になり、刺すような、または焼けるような痛みが生じ、腕と脚に力が入らなくなります(末梢神経の障害)。皮膚の神経が損傷すると圧力や温度の変化を感じなくなるため外傷を繰り返すようになります。




糖尿病の長期合併症

組織または器官

起こる現象

合併症

血管

アテローム動脈硬化のプラークが形成され、心臓、脳、脚、陰茎の大動脈や中動脈の血流を妨げる。小血管の血管壁は損傷を受けて酸素が正常に運べなくなり、血液が漏れ出す

血液循環の悪化により傷が治りにくくなり、心臓病、脳卒中、手足の壊疽、勃起機能障害(インポテンス)および感染症が起こる

網膜の毛細血管が損傷される

視力低下、最終的に失明

腎臓

腎臓内の血管が肥厚し、尿にタンパク質が漏れ出て、血液は正常にろ過されない

腎機能低下、腎不全

神経

ブドウ糖が正常に代謝されず、血液の供給が不十分なために神経が損傷される

突然または徐々に起きる脚力の低下、感覚の低下、刺すような痛み、手足の痛み、神経の慢性的な損傷

自律神経系

血圧と消化過程を制御する神経が損傷される

血圧の変動、ものを飲みこみにくくなる、下痢を伴う消化機能の異常

皮膚

皮膚への血流が不足し感覚が失われるためにけがを繰り返す

びらん、深部まで達する感染症(糖尿病潰瘍)、傷が治りにくくなる

血液

白血球の機能が障害される

感染症を起こしやすくなる(特に尿路と皮膚)

結合組織

ブドウ糖が正常に代謝されず、組織が肥厚または収縮する

手根管症候群、デュピュイトラン拘縮





糖尿病網膜症
 眼底の血管が傷みこぶができたり、血液成分が眼底ににじみ出たり、出血したりします。硝子体出血や網膜剥離を起こすと視力障害を起こします。さらに進行すると失明します。中年以降の失明の原因の第一は糖尿病網膜症です。症状が無くて進行し、症状が出る頃には相当ひどくなっています。視力が落ちてきて眼科を受診し、血液も尿も検査する前に眼科で「あなたは糖尿病だから内科へ行きなさい」と言われる患者さんはけっして珍しくありません。
 早期であれば内科的治療と眼科での光凝固療法で進行を止める、または遅らせることが出来ます。

糖尿病腎症
 腎臓の糸球体血管に網膜症と同じ病変がおこり、糸球体の破壊と機能停止が起こります。尿にアルブミンというタンパクがでるようになり、どんどん進行して腎機能が落ちてきて、尿と共に身体の老廃物を体外へ捨てることができなくなり、血液透析をしなければならなくなります。新しく血液透析をする患者さんでは糖尿病が原因のがトップになりました。定期的に尿アルブミンの検査をしていれば腎症を早期発見出来ます。正常に戻すことが出来るレベルで発見して治療しましょう。

糖尿病神経障害
 高血糖が続くと末梢の知覚神経がおかされ、手足の痺れから始まりひどい痛みとなり、最終的には全く痛みを感じなくなります。靴に石ころが入っていても解らず靴を脱いで靴の中が血だらけになっていることもあります。感染しても痛みが無いため放置しがちで、ひどくなって血管障害とも重なり壊疽をおこし足を切断しなければならないこともあります。
 神経障害は足や手の末梢神経だけでなく、自律神経にもきます、頑固な便秘、糖尿病性下痢、立つと血圧が下がりめまいがして倒れる起立性低血圧症、発汗障害、膀胱の機能障害、勃起障害などが起こります。

動脈硬化症
 近年、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患が、日本人の死因の上位を占めるようになってきています。「人は血管とともに老いる」とよく言われます。年を取ったら誰でも動脈硬化になります。しかし糖尿病の治療をきちんとしなかった患者さんは明らかに老化現象である動脈硬化が早くきます。私達の病院では動脈硬化を測定する機械を導入し糖尿病の患者さんの検査をしていますが、糖尿病患者さんとそうでない人と大きな違いがありました。予想以上でしたので学会に報告します。すなわち糖尿病特有の三大合併症がおこる前に動脈硬化症が忍びよっていたのです。これは高血圧症、高脂血症、喫煙、肥満、等によっても促進されます。すべての動脈硬化症は糖尿病単独のせいではありませんが、治療していない糖尿病が最も重要な危険因子であることにはかわりありません。それら危険因子が重なればさらに相乗効果をもって動脈硬化が加速されます。糖尿病の患者さんでこれらの危険因子を併せ持つ場合、治療目標を糖尿病だけを持つ患者さんより厳しくしなければなりません。

心筋梗塞
 動脈硬化が心臓に血液をおくっている血管におこり、血管がつまり心臓の筋肉が壊死に陥る病気です。壊死が広範におこれば心臓が破裂して一気に死亡します。
完全に詰まってしまう前に血管が狭くなっている診断がつけば、血管に風船を入れて細くなった血管を膨らませる治療をします。つまっていれば血栓を溶かしたり、バイパスの手術をします。友人の心臓外科医は糖尿病の患者さんの血管はもろくて手術するのが難しいと言っていました。

脳梗塞
 十分治療していない糖尿病では、脳に血液を送っている血管も動脈硬化が進行します。血管が傷んでそこにできた血栓が飛んで脳の血管を詰まらせたり、動脈硬化により血管内腔が狭くなり、やがて詰まってその先の脳が壊死に陥る状態を脳梗塞と呼びます。広範にまたは生命維持に重要な脳の部分に起これば植物人間になったり死亡します。
 多発性の小梗塞が先行する場合、症状はありません。進行して中等度以上になると痴呆になりやすくなります。

以上糖尿病の慢性合併症について簡単に述べましたが、どれをとっても大変な病気です。しかし糖尿病の血糖コントロールを中心にきちんと治療を続けていけば合併症を起こすことは少なくなります。またすでに合併症を起こしている患者さんでも治療を続けて行けばそれ以上進行しないようにする事ができます。よく「自分はうまいものをたくさん食べ、酒を飲み、たばこを吸い、好きなことをやって太く短く生きるんだ」といって治療をしない患者さんがいらっしゃいます。しかし人生思いどうりに行かないものでこういう患者さんは合併症がでたあと長い期間苦しまれます。植物人間になったとたんに糖尿病の治療が徹底されそれから長生きされる患者さんもいらっしゃいます。
 糖尿病は検査の病気ともいわれます。これは初期においては症状が乏しく、病識(自分が病気であるという認識)が持ちにくく、診断治療の目安は血糖やHbA1c(グリコヘモグロビン) の検査だけだからです。定期的に検査を受けその結果を糖尿病手帳に記入して、データーが悪くなりそうになったら生活習慣を見直し、治療法を変更し、軌道修正しながら治療を続けて行かなければなりません。糖尿病を良く理解し知性と自分で治療していく意欲を持ち実行して行きましょう。私たちは出来るだけのお手伝いをいたします。




インスリン補充療法
1型糖尿病の人の大半はインスリン療法が必要です。2型糖尿病でも同様に多くの人がインスリン療法を必要とします。インスリンは通常、注射されます。それはインスリンが胃で破壊されるため、経口では服用できないからです。現在は、鼻腔スプレーや経口で服用できる新しい剤形も試用されています。

インスリンは通常、腕、もも、腹壁の皮下の脂肪層に注射します。使われる小型注射器は非常に針が細く、注射をしてもほとんど痛みを感じません。インスリンを皮下に送りこむエアポンプは、注射針が耐えられない人のために使用されます。インスリンペンはインスリン入りのカートリッジを備えられるので、携帯したり、特に1日数回、自宅以外でインスリン注射が必要な人には便利です。インスリンポンプを使う方法もあります。この装置は、皮膚に刺したままにした小さい針からインスリンを連続的に送りこみます。インスリンの追加量は、プログラムされた時間に、あるいは必要に応じて放出されます。ポンプによる補充法は体内でインスリンが正常につくられる方法に、よりよく似せた方法です。ポンプを使うとさらに良好に血糖コントロールができる人もいますが、ポンプの装着が煩わしいという人や、針を刺した部位がただれる人もいます。

インスリンには3種類の基本型があり、それぞれ作用する発現時間と持続時間が異なります。レギュラーインスリンなどの速効型インスリンは、作用が最も速く現れますが、持続時間は短時間です。リスプロインスリンはレギュラーインスリンの1種で、最も速効で作用します。速効型インスリンは毎日数回注射が必要な場合に使用され、食前15〜20分あるいは食後すぐに注射されます。この作用は投与後2〜4時間で最高の活性を示し、6〜8時間持続します。

中間型インスリン(インスリン亜鉛懸濁液、レンテあるいはイソフェンインスリン懸濁液など)は1〜3時間で効きはじめ、6〜10時間後に最大の効果を発し、18〜26時間持続します。この種類のインスリンは朝に注射して1日の前半分を供給するか、夕方使用して夜間のインスリンを供給します。遅効型インスリン(遅効型インスリン亜鉛懸濁液、ウルトラレンテ、グラルジンなど)は、最初の約6時間はほとんど作用がありませんが、28〜36時間効果を持続します。

インスリン製剤は、数カ月間は室温で安定しているので、持ち運びができ、職場や旅行にも携帯できます。しかし、インスリンは極端な温度で保存してはいけません。

経口血糖降下薬
2型糖尿病では、経口血糖降下薬で血糖値を十分に下げることができます。しかし、1型糖尿病では効果がありません。経口血糖降下薬にはいくつかタイプがあります。スルホニル尿素薬(グリブリドなど)とメグリチニド(レパグリニドなど)は、膵臓のインスリン産生を刺激します(インスリン分泌促進薬)。ビグアナイド薬(メトホルミンなど)やチアゾリジン誘導体(ロジグリタゾンなど)は、インスリンの放出には影響しませんが、体のインスリンへの反応を促進します(インスリン抵抗性改善薬)。医師はこれらの薬のいずれかを単独か、それにスルホニル尿素薬を組み合わせて処方します。別のタイプの薬として、アカルボースなどのグルコシダーゼ阻害薬があり、これは腸内でブドウ糖の吸収を遅らせる作用があります。